熊とトンボ。ちくわとちくわぶ
ちくわとちくわぶ
「今日は何食べたの?」と訊かれた。
「えーとね、またキムチ鍋食ったよ」と答えた。
「中身はまた野菜だけのやつ?」
「いや、野菜だけだと物足りなくなってきてさ、でも家では肉は食べないようにしようと思ってるから、その代わりにちくわを入れてみたよ。割と美味しかった」
「そっか。いいね。ちくわぶも入れたんだ?」
「え…、う、うん…。ぷぷぷ。あれなんだね、ちゃんと『ちくわぶ』って呼ぶタイプなんねw」
「え?どういうこと?」
「いや、俺はさ、「ちくわ」のことは「ちくわ」って呼ぶんだけど、「ちくわぶ」って呼ぶんだなと思ってw」
「え?」
「え?」
「『ちくわ』と『ちくわぶ』は別物だよ」
「へ?」
たとえ話として成立してない
「うそ?本当に?」
「割とメジャーだと思うけど…」
「いやいやいや。そんなの初めて知ったわ」
「山ちゃん、割と世の中のこと知らないもんねw」
「いや、『ちくわ』と『ちくわぶ』の違い以外は、世の中のこと全部知ってるけどね」
「はぁ、そうですか。それはすごい」
「でもさ、例えば、例えばだけど、『バスケ』と『バスケ部』は違うじゃん」
「うん、そうだね」
「『野球』と『野球部』も違うし、『サッカー』と『サッカー部』も違うじゃん。あと、『で』と『でぶ』も全然違うし」
「山ちゃんさ」
「はいよ」
「例え話として成立してないよね?」
「そんな風に理屈ばっかり言うんじゃない!」
「そんな風に屁理屈ばっかり言うんじゃない!」
「はい!」
熊 VS トンボの勝負
↑の写真の『なんちゃらメモリアル公園』みたいなところに行ってきた。
今年の春頃にそこで熊の目撃情報があり、一時立ち入り禁止になっていたのを知っていたので、正直僕は怖かった。
僕は熊が怖いのだ。
ただ、せっかくここまで来たのに『春に熊の目撃情報があった』みたいなことを言って怖がらせるのも嫌なので、「熊出たら怖いからさ、一応車のカギ開けておくから。そんで、『熊だー!』ってなったら、車に逃げてね。そんで俺は熊にドロップキックをお見舞いしてやっから」と言ったら、「へぇ、ふふん」と笑われた。
あの子は危機管理シミュレーションをしないのだきっと。
そして僕らはそのまま徒歩で、安田侃の作品を見に行った。
すると隣で「うげー!」「ほぁっ!」「んふぁーーーっ!」と、ネズミを天敵とする絶滅危惧種の変な小動物みたいな変な悲鳴を上げる。
「え、どしたの?熊いた?」と、僕は背後を見たりして訊いた。
すると「いや、トンボ」と短く答え、また「ふふふん!」「う、うは!」と悲鳴を上げる。
「いや、トンボじゃん」
「トンボ嫌い」
「なんで?」
「気持ち悪い」
「どこが?」
「全体的なフォルムが」
「熊より良いじゃん」
「熊より嫌だ」
「なんで?」
「気持ち悪いから。熊は怖い。トンボは気持ち悪い。じゃあトンボの勝ち」
「判定で?」
「判定で」
「なるほどね」
太った、完全に
「ぽちゃぽちゃじゃん」と言われた。
「太ったからね」と答えた。
僕は、太った。
僕は、美唄のぽちゃぽちゃおじさんになった。